2017年 11月 16日
大阪第二弾。京都の「国宝展」。長谷川等伯の「松林図屏風」。凄い人気と観覧者の数。
大阪の「北斎展」と合わせて面白い企画はないかと、インターネットで検索しました。
大当たりです。
京都国立博物館で「国宝展」が開催中です。
そのネットの「国宝展」の案内に、なんと長谷川等伯の「松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)」があるではありませんか!
「国宝展」は四期に分かれて展示され、展示作品が変わります。「松林図屏風」は、正に大阪にいる旅行中の期間(第三期)の展示です。他の期間は展示がないのです。
この偶然は奇跡的です。
この作品は、東京国立博物館所蔵で常設展示はなく、年に一度、正月頃に展示されるんです。生きているうちに一度は観たいと思っていました。
京都に向かって、松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)に向かって、Go!
前日の「北斎展」の疲れを少し感じながら、京都国立博物館の開館時間(10時)に間に合うように京阪電車で七条駅まで移動です。七条駅でビックリです。下りる乗客がほとんど全員同じ方向に向かって歩いています。
嫌な予感がしますが、ついていきました。
博物館前は開館前の9時30分なのに長蛇の列(たとえが古い・・・な)。
30分は館の外で並び、40分は博物館の前庭で並び、やっと入館。
見学を端折って端折って、伝源頼朝像(でんみなもとのよりともぞう)にたどり着きました。
最近この肖像画は「頼朝ではない」とされています。誰を描いたかは重要ですが、たとえ頼朝でなくても、この作品の価値を落とすものではありません
この肖像画、オジサンの想像より大きいんです。図版の写真では分からない凛とした迫力があります。
それにしても写実的です。
顔は細面で贅肉がなく締まっています。
ジッと挑むように前を見据える目、キリッと結んだ厚い唇、高い鼻。
この人物が自分の力で未来を切り開こうという強い意志と性格がうかがわれます。
いよいよ長谷川等伯の「松林図屏風」です。
大きい。6曲1双の屏風絵ですから当然です・・・・・
(右隻)
(左隻)
意外と見学者が少なかったので、一番前でガラスケースを横に舐めるように鑑賞できました。
近くで見ると筆の動きが分かり、等伯はもの凄いスピードで描いたと思われます。
さらに、10mほど作品から離れ全体を鑑賞しました。
等伯は、こんな絵の構想をどうして持つことができ、どうしてこんなにリアルに霧に浮かぶ松林を描くことができたのでしょうか?
ヒョイと観ると、白い中に松が浮かんでいるだけの絵にみえるんですが、描かれる松は、描かれる位置がそこしかないと感じさせます。
霧に浮かぶ松の濃淡が奥行を生み、霧の奥の見えない世界へ鑑賞者の目と心を連れていきます。
図版では見えにくいですが、左隻の右上段(全体では中央上段)にごく薄い線で山が描かれています。いつの間にか目線がその山に向かって誘われています。
絵を見つめていると、たくさんの鑑賞者がいるにもかかわらずざわめきが消え、鑑賞者の存在さえ消え、絵の向こうに心を連れていかれてしまい、時間を忘れてしまいました。
他の国宝を見てはこの絵に戻り繰返し、何度も作品の前に立ちました。
期待通りの素晴らしい作品です。
この絵だけで充分です。
京都に来た甲斐がありました。長い時間待っていた甲斐がありました。