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映画の話 「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」 名優二人の競演

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監督スティーブン・スピルバーグ

製作エイミー・パスカル スティーブン・スピルバーグ クリスティ・マコスコ・クリーガー
製作総指揮ティム・ホワイト



国防長官ロバート・マクナマラがベトナム戦争の戦況の変遷、アメリカ政府の関与を調査し、機密文書として保管されていた。文書には、歴代の四人のアメリカ大統領が国民を欺き、ベトナム戦争を拡大・継続してきたことが記されていた。

この文書が持ち出され、ニューヨーク・タイムスがスクープした。

当時のニクソン大統領は、機密漏洩としてニューヨーク・タイムスに圧力をかけ、記事の掲載を差し止めを求めた。ニューヨーク・タイムスは掲載を止めた。

ワシントン・ポストの敏腕編集主幹ベン・ブラッドリー -(トム・ハンクス)も文書を入手し新聞の掲載を試みるが、政府は圧力をかけ、一方、ワシントン・ポストの経営陣は社の将来を案じ反対する。社主であるキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は経営と新聞の役割の板挟みになり、掲載すべきか悩む。

しかし、キャサリン・グラハムは、ベン・ブラッドリーに掲載を許可する。
ニューヨーク・タイムスが中止した後、最初の掲載であった。

ワシントン・ポストを支援するように新聞各社は文書の記事を掲載した。

司法省は、ワシントン・ポストに禁止命令と恒久的差し止め命令を要求したが、連邦裁判所判事は今回は訴えを却下、最高裁判所は差し止め命令を無効とした。

法廷の外には多くの女性がキャサリン・グラハムを待ち、裁判所をでる彼女を尊敬の眼差しで見つめていた。


メリル・ストリープの演技は素晴らしい。

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主婦業に専念するはずだったが、夫の死によってワシントン・ポスト社の社主・発行人になる。経営に悩むが、政府の強硬な圧力に負けずに新聞の役割を全うする。自信なさげの登場から、掲載を決断するまでの心の変化を静かに自然に演じている。

この映画の第一のテーマは、アメリカ社会の女性を軽んじる傾向に強く立ち向かうキャサリン・グラハムの姿だと感じた。

ベン・ブラッドリーを見たことはないが、トム・ハンクスは歩き方、姿勢、話し方を演技で見事に再現しているといわれている。

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演技は真似から入るといわれる。かつて、ウオルト・ディズニーを演じたトム・ハンクスは、まさしくウオルト・ディズニーその人でだった。私は、子どもの頃、テレビの番組でウオルト・ディズニーを見ている。

映像が素晴らしい。一見地味な新聞社のオフィスだが、隅々まで見事な時代考証で作りあげられている。セットの完成度が素晴らしい。

特に、記事が新聞に印刷される印刷工程のシーンはリアルであり、印刷装置の造形の美しさとダイナミックな動きに感動した。

又、当時1970年代のアメ車がたくさん登場するが、どこから見つけてきたのだろうか。

朝は早く印刷された新聞の束を配達するシーンでは、道を走る運搬トラックはスピードを落とさず、開放した荷台の後の扉から道に束を放り投げるのである。これは、配達された新聞に大きなスクープが掲載されていることを予感させ、観客の緊迫感を刺激している。


ベン・ブラッドリーがタイプライラ―で記事打つ記者に、「二本の指で叩くな!」というシーンがあったが、ちょっと意味が分からない。タイプを早く正確に打つための基本的な技術を指摘しているのだろうか。シーンとセリフがあるので、きっと意味があるのだろう。


スピルバーグ監督は、トランプが大統領に就任した45日後に本作品の製作を発表した。そのて、わずか1年で完成させ世界に送り出した。

政府の圧力による報道の自由の侵害、メディアの萎縮を恐れたのであろう。

本作品の公式ホームページのスピルバーグの言葉を引用する。

「今こそ、報道の自由という美徳を追求するのに完璧な時期だ。信念を貫いた報道が行われることでこの国の民主主義がいかに発展するかについて、率直な議論を交わすべき時だと思っている。」


by hitoshi-kobayashi | 2018-04-10 08:00 | Comments(0)