2016年 11月 18日
映画の話 「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ 」この映画観ました。
1920年代にぺミングウエイやフィッツジェラルドを発見し世に送り出した敏腕編集者マックス・パーキンズと夭折の天才作家トーマス・ウルフの実話を映画化したものです。
タイトル ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
原題 Genius(天才,非凡な才能,鬼才←私が調べました)
日本公開年 2016年
製作年/製作国 2016年/イギリス・アメリカ
監督 マイケル・グランデージ
原作 A・スコット・バーグ『名編集者パーキンズ』
出演 コリン・ファース(マックス・パーキンズ)、ジュード・ロウ(トーマス・ウルフ)、ニコール・キッドマン(アリーン・バーンスタイン/ウルフの恋人)、ガイ・ピアース(F・スコット・フィッツジェラルド)、ローラ・リニー(ルイーズ・パーキンズ/マックスの妻)、ドミニク・ウェスト(アーネスト・ヘミングウェイ)
『国王の演説』の名演技が記憶に残るコリン・ファースが演ずるマックス・パーキンズが渋いんです。
抑えた演技の奥に秘める激情を見事に演じています。
パーキンズは、どんな時も帽子をかぶり、三つ揃えのスーツを着ています。
会社にいるときも、家にいる時も、食事をするときも、ヘミングウエイと釣りをするときも。
これは変人ですね。しかし、常識人で大人の対応ができる人です。
一方、ウルフをジュード・ロウは激情的に演じ、好対照な二人の絡みによって画面に緊迫感が走ります。
ウルフの他人の気持ちを理解しない自己中心な言動、揺れ動く激しい感情、溢れ出てくる言葉、孤独を誰かに支えて欲しいのにうまく言い出せないもどかしさを、ジュード・ロウは見事に演じています。ウルフは普通に嫌な奴です。この人も変人です。
パーキンズはそんなウルフを持て余しながらも、才能を認め、編集者として作品にアドバイスを続け、ベストセラーを生み出します。才能ある変人が二人いると、とんでもないことができてしまうらしい。
二人の間には年齢や立場を越えた信頼と友情が生まれます。
そんな二人の関係がハッピーに続かないところが映画になる理由でしょう。
作家と編集者の関係は知らない世界の話ですが、この映画を観て編集の厳しさ、難しさを感じました。ウルフの文章がパーキンズにより削除・削除の連続です。余分な枝葉を削ぎ落します。パーキンズは、言葉や文章をウルフに押し付けるのでは無く、何故違うのかを徹底的に説明することで、ウルフから言葉や文章が生まれることを促します。パーキンズは、作品がウルフのものであるとの立場をしっかり守ります。
しかし、パーキンズは、自身がウルフの作品をゆがめているのではないかと話す場面があります。
編集者の葛藤でしょうか・・・
パーキンズは「編集者は黒子」ともウルフに話します。
ウルフのパートナーのアリーンをニコール・キッドマンが演じています。
アリーンは既婚でありながら、18歳年下のウルフの才能を信じ、夫、子供を捨ててウルフを支えてきました。しかし、アリーンにふり返らなくなるほどのウルフと編集者パーキングの濃密な関係に激しく嫉妬します。ニコール・キッドマンは、刃物を突き付けるかのように激しく鋭く演じています。
ウルフは、満37歳で脳腫瘍のため夭折します。
ネタバレになりますが、ラストシーンが秀逸です。
病院で死の間際に書いたウルフの手紙が、ウルフの葬式の後にパーキンズの事務所に届きます。
パーキンズは、かつてウルフと編集の仕事をしていた部屋のドアを閉め、静かに手紙を読みます。
そこには、ウルフからの感謝の言葉が綴られていました。
映画の中で初めて帽子をとり、読み続けます。そして涙を落とします。
時代は1920〜30年代のアメリカです。CGを使っているのでしょうが、見事にその時代のアメリカの街並み、駅、波止場を再現しています。
映画でCGを使うと、何でもできるんですね。
地味な内容の映画ですが、丁寧な映画作り、時代考証、俳優の演技に目が離せず、観ている時間が短いと感じさせます。