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本の話 ボーモン夫人著「美女と野獣」北村太郎訳 王国社

ボーモン夫人著「美女と野獣」北村太郎訳 王国社1992

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挿絵から・・・・・
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「美女と野獣」は、1740年にガブリエル=スザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ(ヴィルヌーヴ夫人、Gabrielle-Suzanne de Villeneuve)によって最初に書かれた。現在広く知られているのはそれを短縮して1756年に出版された、ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン(ボーモン夫人、Jeanne-MarieLeprince de Beaumont)版です。(ウキペディアから)

ボーモン夫人が読まれているのは短いからでしょうね。

ストーリーは映画よりズーッとシンプルです。

映画では、主役の美女のベルは一人娘ですが、原作では姉が二人、兄が三人います。母親はいません。

二人の姉はベルの美しさに嫉妬している悪役なんです。シンデレラの姉たちの役割です。

兄たちは大した役割ではありません。話の途中から消えてしまいます。

シンデレラでは異母姉妹でしたが、ここでは実の姉妹なんです。怖いですね。

この姉妹はベルに対する悪意を持った仕打ちの罰に、妖精によって石像にされてしまいます。これは映画にないですね。

この妖精が姉妹にむける言葉が恐ろしいんです。要約ですが・・・・

「回心すればもとに戻れます。ひとはだれでもおごり高ぶった心、怒り、大食らい、だらけた気持を直すことができますが、わるい心、ねたみでいっぱいの心が正しくなるのは、奇跡を待つしかないのです。」

早い話、「回心するのは奇跡だよ。あんたたちは石像のままですよ。」と、言っているんです。

私は、妖精が挙げた理由の一つ一つが耳に痛いんです。特に大食らい、だらけた気持は・・・

原作にはベルに執拗に求婚する悪漢ガストンは登場しません。

悪漢がいるとストーリーの起承転結の「転」の振れ幅が大きくなり、はらはらドキドキのドラマチックな展開になります。映画でのガストンは、それなりに格好良かった。

原作は子どもに「優しい気持ちを持ちなさい。見かけで人を判断しちゃいけないよ。」と、話しきかせる童話なので、大人の横恋慕はテーマから外れるのかもしれません。

ヴィルヌーヴ夫人版を読んでみたくなりました。

違ったエピソードがあるかもしれません。



翻訳をしている「北村太郎」は、戦後の有名な詩人です。翻訳はとても分かりやすく、こなれています。北村太郎をいつか紹介したいと思っています。

「ねじめ正一」が小説『荒地の恋』で北村太郎の生涯を描いています。


by hitoshi-kobayashi | 2017-06-10 08:00 | Comments(0)