2018年 07月 06日
本の話 木皿泉著「すいか」河出文庫 2013年
本の話 木皿泉著「すいか」河出文庫 2013年
霧島在住の方のBlogでこの本の紹介がありました。読んでみようと思いました。
速攻、札幌で(おそらく)一番大きい書店・ジュンク堂に行き、検索。在庫0冊。
ジュンク堂、大したことありません。それなら世界のAmazonです。4日ほどして本が届きました。
パラパラとめくってみます。イヤ~、ビックリしました。なんと脚本です。脚本を読むのは久しぶりです。脚本は、取っ付きが悪いのですが、舞台設定がイメージでき、登場人物のキャラクターが理解できると面白いのです。自分が演出家となって役者を動かし、同時に観客でもあって、自分の頭の中の舞台もしくは映画・テレビを観ているのです。
『すいか』はテレビドラマだったのです。
私はテレビを観ることが少なく、特に連ドラは全く興味がありません。そんなわけで先入観無しに『すいか』に取り組みました。
「すいか」は東京都三軒茶屋にある二階建朝夕食事付下宿屋「ハピネス三茶」に暮らす4人、
〈早川基子34歳、独身信用金庫OL〉
〈亀山絆27 歳。売れないエロ漫画家〉
〈崎谷夏子50代前半。大学教授〉
〈芝本ゆか20歳。ハピネス三茶の大家〉、と
〈馬場万里子34歳、基子の同僚。3億円横領・逃亡中〉が織りなす笑いあり、涙あり、真面目でありのドラマです。
これらの女性たちは、心のどこかに欠落感があり、今のままではいけない。もっと自分らしく生きたいと思っています。しかし、変わることができない自分にイライラしています。
そんな舞台設定をしながら、作者の木皿泉は、登場人物に言いたいのです。
「この世には変わらない事なんかない。毎日少しずつ変わっている」と、言いたいのです。
最後のセリフのある場面です。現実ではなくイメージです。馬場チャンは逃走中です。
#71 川原(イメージ)
基子と馬場チャンが朝日を見ている。
キラキラ光る水面。
馬場チャン 「(ため息)また、似たように一日が始まるんだね」
基子、振り返る。
基子 「馬場チャン、似たような一日だけど、全然違う一日だよ」
朝日を見ている二人。
残念なのは、人生を見つめ、悩み、現状を打破しようとしているのは女性ばかりで、魅力ある男性が登場しないのです。
間々田伝45歳は、夏子の教え子でハピネス三茶に出入りし、いろいろ面倒を見る中年男性。でも、彼は家庭があり、その家庭からの逃避的な行動なのです。
野口響一32歳は、間々田の娘に振られ、その後、絆に恋し、優しい性格だが恋人になり損ねます。もう一押しが足りない。
この二人の役の働きが読み取れないのです。男、軽いな~、優しいな。
それに比べ、基子の母・梅子。スナック「泥船」のママは存在感十分です。
タイトルの「すいか」は象徴的です。腐ったすいかでもタネを植えると芽が出る。一つのすいかを切り分けて皆で食べる。絆の芽生え。人生で食べることは大切です。
とにかく、食事のシーン、食べ物がたくさん出てきます。
カレー、かつ丼、トロ、煎餅、すいか、ハンバーガー、しゃぶしゃぶ、明太子、大きなケーキ、小さなケーキ、そうめん、お茶+クッキー、などなどなど・・・・
文庫には、放映にない「オマケ」の数年後の一話があります。
ナポリに旅立った教授・夏子が帰ってきます。夏子は余命わずかの癌です。基子、ゆかはいまだ、ハピネス三茶暮らし。絆は売れっ子漫画家になり、マンション生活。妊娠中。父親は響一かどうか分かりません。シングルマザーです。夏子が帰って来ると聞いて、ハピネス三茶に顔を出します。おせっかいの男性・間々田も泥船のママも顔を出します。
皆がもう一度一緒に生活する・・・顔をあわせる・・・、少しずつ変わっています・・・。
新人が一人増えました。絆の赤ちゃん!
セリフが無言でも、セリフ括弧の中に具体的な行動や精神状態の演技指示が書かれています。読み物として、これが面白い。それで笑ったり、感動したりします。脚本家は、とても具体的な演技指示を役者に行っています。役者がやりやすかったかは分かりません。
アっという間に「すいか」の世界に引き込まれ、アッという間に読み終わりました。とても楽しい時間でした。残りページが近くなると、登場人物との別れが惜しく、読むスピードを落とし、味わいながら読みました。
随分前ですが、飲み会での女性数人の会話です。
―― そのうち、みんなで同じマンションに住もか?
―― それでさぁ、部屋は別々。でもさぁ、一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりする。
―― お互い干渉せず、行動は自由にしようね。
―― 何かあったら、助け合う。これは絶対の約束。
―― イイね、イイね。
「私も参加できるのかな?」と、思いましたが、口に出すのが怖くて、聞こえていない素振りして、難しい顔して、酒を飲んでいました。
設定が似ていませんか? 女性たちは本気だったのかは分かりません。
「ゆか」のアイスの棒のもう一本もらえる当りが続くエピソードが出てきます。私は、小さい頃、「くじ付きガム」で同じ経験があります。店のオジサンは最初笑っていましたが、顔がだんだん険しくなり、私は「又、当りだったらどうしよう」と、どんどん不安になり、早くハズレが出ないかと思い出します。
結局、オジサンはとても怖い顔でストップをかけました。今、想像すると、当りとハズレは別々の箱で、店で適当な割合で混合するはずが、間違って当りばかりの箱を出してしまった・・・・。
この時期の北陸は梅雨寒の季語がぴったりで、湿度が高く気温が下がりそのため寒く感じます。と言いましても、気温は20℃ぐらいでしょうか。
湿度が高く洗濯物が乾かないんで、7月でも軽く薪ストーブに火を入れます。
友人が車で北海道に行っていますが、楽しみにしていた旅行が雨でかわいそ。
シェーン
とても面白かったです。間の取り方とか表情とか無言のコンタクトとかが思い出されて・・・
わたしも、梅子さんと(ハイリ)さんの泥船ママが絶妙で存在感大!でした。
オマケも良かった~・・・・・・・
読んだ方じゃないと、分かりませんね、このコメント!
ハハハ