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本の話 須田茂著「近現代アイヌ文学史論」 寿郎社

須田茂著「近現代アイヌ文学史論」

アイヌ民族による日本語文学の軌跡〈近代篇〉 寿郎社 2018

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アイヌ民族の研究がどのように進められているか、門外漢の私にはわかりませんが、在野研究者・須田茂のしっかり資料の裏付けを取りながら論を進める真摯な姿勢に感じ入り、読み通しました。


本著の「はじめに」を引用します。


――(略)それは先住民族でありかつマイノリティの人たちの文学史であり、日本におけるマジョリティの人達の「国民文学」の歴史ではない。(略)―― 


――(略)つまり我が国のマジョリティであるところの和人――が持っている「近現代」「アイヌ」「文学」の概念が、本書での主体となるアイヌ
民族の視点ではどのように考えられているか、ということを確認することから始められなければならない。(略)――


須田は、アイヌからの視点をキープしながら論を進めることを、本著を貫く基本的な姿勢としています。


――「文学」とは言うまでもなく言語によって表現された芸術である。したがって言語によって表現されていれば文字によって書かれたものであるか否かは問わない。なぜなら「言語は人類に普遍的に用いられているが、文字は少しも普遍的ではない」[川田順造「無文字社会の歴史」]からである。――


――(略]文学の通説的な形式に捉われず、人間固有の感動をもたらす著述全般を「文学」と位置付けた上で[略]。[略]「文学史」というよりは、むしろ「著述史」あるいは「言論史」とする方が適当と思われるかもしれない。――


この本で、大正から昭和に現れたアイヌの著述者を知りました。

山辺安之助、武隈徳三郎、知里幸恵、違星北斗、バチェラー八重子、森竹竹市など・・・

彼ら、彼女らは、日本政府がアイヌ民族に行った政策を受け止め、悲痛な発言をしています。

本著に触発され、知里幸恵著『アイヌ神謡集』岩波文庫、バチェラー八重子著『若きウタリに』岩波現代文庫を読みました。

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知里幸恵は、アイヌ神謡をアイヌ語から日本語に訳した思いを、「序」に瑞々しい明晰な文章で綴っています。

バチェラー八重子は、短歌でアイヌ民族の思いを表現しています。しかし、本著から短歌はアイヌ語の文学的表現手段ではなく、日本語の表現手段であることを教えられました。

違星北斗は、向井豊昭の作品「うた詠み」で描かれていて、強烈な印象を受けたことを記憶しています。改めて、違星北斗の作品を読んでみたいと思います。


by hitoshi-kobayashi | 2018-08-10 08:00 | Comments(0)