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本の話  「食の図書館 トウモロコシの歴史」 原書房 2018年

マイケル・オーウェン・ジョーンズ著、元村まゆ訳

「食の図書館 トウモロコシの歴史」原書房 2018

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トウモロコシの生態・歴史・食べ方など、広範にわたって分かりやすくまとめた一冊です。専門書・学術書ではありませんので、気軽に読むことができます。

トウモロコシは、身近な野菜・穀物でありながら意外と知らないことが多いかもしれません。

この本の第1章の冒頭に面白い指摘がありました。

「トウモロコシ(学名Zea mays)は野生では生育せず、人間による栽培を必要とする。苞葉(ほうよう)が穂軸(ほじく)全体を覆い、穀粒が密集しているために、自力で地面に種を落とすことができないのだ。」

著者は、トウモロコシを世界中に伝搬したのは、風や鳥や獣ではなく人間だと言っているのです。私は、「ヘエ~・・・」と小さなショックを受けました。

この指摘からも、トウモロコシと人間とのかかわりの深さを感じます。


トウモロコシの起源にはいくつか説があります。

神からの贈り物、テオシント起源説、トリサクム起源説、宇宙からの渡来(宇宙人の贈り物)説など。早い話、人間が大昔から栽培しているのに、トウモロコシがどのように誕生したのか、分からないのです。


チョットだけトウモロコシの解説です。

(写真はインターネットからお借りしました。)

トウモロコシは雌花と雄花が別々に咲きます。雌雄異花といいます。茎の先端のススキノようにボサボサしている部分が雄花です。

                 雄花(雄穂)

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茎の中ほどの位置にある白いひげが出ている部分が雌花(英ear)です。

Earは耳と同じスペルです。

              雌花(雌穂)

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白いひげは雌蕊(めしべ・花柱)で絹糸(英silk)と呼ばれます。この絹糸の表面は一見ツルツルしているようですが、小さな突起がたくさんついています。この突起で雄花からの花粉をつかまえます。

               絹糸(通称ひげ)

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花粉 

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つかまった花粉は、花粉管を伸ばし、絹糸の中を通り、苞葉の中に包まれている胚珠まで移動して授精します。だから、ひげの数と粒の数は同じなのです。神秘的ですね。


一つの株に雄花と雌花があるのに、自分の花粉で授精することが非常に少ないのです。別な株の花粉で受精します。これを他家授精といいます。だからトウモロコシは一株を大切に育てても実入りはよくありません。たくさんの株を栽培することが大切です。

雌穂を包んでいる部分を通常「皮」と呼びますが、「苞葉」が正しい名前です。この苞葉を丁寧に取り外し、乾燥させてトウモロコシ人形の材料に使います。

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難しい話はこれくらいで。

この本を読むと、トウモロコシの専門家になれます。

トウモロコシと各国の料理や文化の関わりは、とても興味深いものがありました。一方で、トウモロコシを取り上げながら、現代の農業や各国の農業が抱えている問題を指摘しています。

改めて、トウモロコシが、人類の食料としてだけでなく、家畜の餌として、工業製品の原料として、エネルギー源として、地球上で大きな役割を果たしていることに驚かされました。

そうそう、この頃バーボンウイスキーを飲んでいます。


by hitoshi-kobayashi | 2018-10-20 08:00 | Comments(0)