本の話 加太こうじ著「紙芝居昭和史」立風書房刊 1971年(昭和46年)

加太こうじ著「紙芝居昭和史」立風書房刊 1971年(昭和46年)

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古本屋の入り口横に積まれていた安売りの一冊。100円の本です。
100円でこんなに楽しく面白く読ませてもらっては申し訳ない。
平成が終わろうとする中で、昭和史を読むのも意味があるかもしれません。

著者・加太こうじは日本の紙芝居業界のドンだったらしいのです。自分で言っているので間違いないのでしょう。

紙芝居は、昭和初期から日本の世相(不況、戦争、敗戦)とともに隆盛し、戦後にマンガの貸本、月間マンガ雑誌、テレビの出現により急激に衰退します。紙芝居の世界を作った当事者の目線から語られる歴史です。

いろいろ面白いことが分かりました。

〇 表現媒体としての紙芝居の成立過程

〇 戦前昭和6年ごろ、失業者が紙芝居屋で日銭を稼いだ。

〇 関東と関西の紙芝居の違い。

〇 飴の原価

〇 紙芝居の原価

〇 紙芝居業界の構図

〇 名作「黄金バット」は田中次郎・後藤時蔵共作の「黒バット」という元ネタがあった。

悪の巨魁怪盗黒バットを倒すために鈴木一郎台本・永松武雄絵「黄金バット」が誕生した。

〇 紙芝居屋が自転車に乗っている理由。最初に、村尾光雄が自転車を使い、子供たちが集まる場所に効率よく回わり、高収入だった。

〇 エロ・グロ物の出現。

〇 昭和23年(1948年)には紙芝居屋は東京で2,000人を越え、全国で30,000人に及ぶ。

〇 水木しげるは、紙芝居を書いていた。「ゲゲゲの鬼太郎(墓場の鬼太郎)」は、昭和7年ころに伊藤正美台本・辰巳恵洋絵「ハカバノキタロウ」が元ネタ。

〇 「忍者武芸帖」、「カムイ伝」の作者・白戸三平は、紙芝居を書いていた。

〇 加太こうじは、鶴見俊輔にすすめられて文筆業となり、「思想の科学」の編集にかかわった。

〇 紙芝居ブームは、戦前と戦後の二度あった。


私は、子供のころに紙芝居を見た記憶があります。もちろん戦後。

自転車に紙芝居の舞台を乗せ、その下には水あめがあったと思います。


NHK
アーカイブスに著者・加太こうじの出演番組が残っています。

加太こうじは、現代ではめったに聞けないような東京弁の歯切れのいい、説得力ある口調で話しています。魅力的です。

本著の最後に、加太こうじは、紙芝居の世界をまとめ的に書いています。引用します。


―― 紙芝居は日本の昭和初期の不況とそれに連なる戦争政策を背景にして発達したゆえに、その歴史の後半において平和と民主主義の道を業界のほとんどが一致してとり得たのかもしれな。(中略)

 紙芝居の歴史をかえりみると、昭和初年にヤクザ―テキヤ組織からはなれたことが、のちに大きく発展するきっかけになっている。また、新しい考えとして社会主義的な風潮がはいったことと、主としてわたしを通してだが、西欧のさまざまな芸術の影響を受けたことが紙芝居の作品を大きく作りかえた原因となった。

 また、戦後の組織を通しての諸運動が、紙芝居出身の人材として、すぐれたマンガ家や民主的な美術家を生んだ。

 以上は、他の街頭、野天における芸術が持つことができなかった紙芝居のみの一大特徴である。


紙芝居は消えてはいません。

大きな書店では、紙芝居の陳列コーナーがあります。幼稚園・保育園では子供たちは紙芝居を楽しく見ています。紙芝居は、そのシンプルさから子供たちをひきつける魅力を持っているのでしょう。


加太 こうじ(カタコウジ) 
昭和・平成期の評論家 元・思想の科学社社長。

生年 大正7(1918)111

没年 平成10(1998)313

出生地 東京市浅草区神吉町(現・東京都台東区東上野4丁目)

出身地 東京・西尾久

本名 加太 一松

学歴〔年〕 太平洋美術学校〔昭和13年〕卒

経歴 小学校上級の頃から紙芝居の絵を描き始めた。昭和7年紙芝居の作者兼絵かきとなり、人気紙芝居「黄金バット」の2代目作者となった。342月転業し、以後、大衆芸能や江戸小咄などを素材にした著作活動に入る。55年「思想の科学」社長兼編集長、61年日本福祉大学教授に就任、63年客員教授となった。著書に「街の自叙伝」「紙芝居昭和史」「落語」「昭和犯罪史」「昭和大盗伝」「下町の民俗学」「江戸の事件簿」「落語的味覚論」「芸界達人浮世話」「東京のなかの江戸」、小説「黄金バット」など。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)


Commented by nayacafe-2950 at 2018-11-14 09:18
紙芝居、興味あります。
子どもの頃いつも見にあつまりました。
お煎餅に何かソースのようなものを塗って挟んだのが
すきでした。
チンドン屋さんもよくきていましたよね~

懐かしい。
読んでみたいです。
Commented by hitoshi-kobayashi at 2018-11-14 17:13
> nayacafe-2950さん
コメント、ありがとうございます。
テレビもゲームなかったころ、家でゴロゴロしていると「子どもは外で遊びなさい。」と怒られました。
紙芝居の面白さと水あめの甘さ欲しさに、紙芝居が来るのが楽しみでした。
昔の記憶ががだんだん遠くなって、こぼれるように消えていきます。
こんな庶民の昭和史にときどき触れて、脳を刺激したいと思っています。
by hitoshi-kobayashi | 2018-11-14 08:00 | Comments(2)