2019年 10月 05日
本の話 最近読んだ数冊
高階杞一+松下育夫『共詩 空から帽子が降ってくる』 澪標 2019年
「共詩とは二人で作る詩の意味」で高階の造語。数行書いて松下にメールで送り、松下はそれに続いて数行書いて、高階へメールで返します。これを繰返して一つの詩を完成させます。
相手の次の展開を予測できないので、思わぬ方向に詩が広がる面白さがあるらしい。
9つの詩が編まれているが、シュールなイメージの広がりが楽しい。
そのうちの一つ「風の引き出し」に、身につまされるように気になった一連がありました。引用します。
(略)
人を愛するためには
訓練をする必要があるのだと やっと知ったのです。
わたしだけが参加するこのなかった
遠い町での訓練が
(略)
マンガ日本の古典21
やまだ紫『御伽草子』 中公文庫 2000年
やまだ紫は、私の大好きなマンガ作家の一人です。書店で本書を発見したときは嬉しくて思わず跳びあがりました。この本には、「一寸法師」「鉢かづき」「長谷雄草子」「ものくさ太郎」「酒呑童子」「猫の草子」の六篇がマンガ化されています。彼女の絵の上手さと、構成力は天才的です。どの作品も、シンプルな線でありながら、登場人物は表情豊かに描かれています。残酷なシーンでも清潔感を感じます。やまだ紫は2009年、60歳で亡くなりました。
中公文庫「マンガ日本の古典」で古典作品をマンガ化しているのは、石ノ森章太郎、花村えい子、長谷川法世、水木しげる、横山光輝・・・・・・と、一時代を築いた作家たちであり、本作品以外もきっと面白いはずです。
『真実の眼――ガランスの夢 村山槐多全作品集』
村松和明(むらまつ・やすはる)著
株式会社求龍堂 2019年
書店で本作品集を見て、思わず購入しました。
村山 槐多(むらやま かいた、1896年〈明治29年〉9月15日 - 1919年〈大正8年〉2月20日)は、明治・大正時代の日本の洋画家で、詩人、作家でもある。愛知県額田郡岡崎町(現在の岡崎市中核)生まれ、京都市上京区育ち。(ウキペディア)
天才と呼ばれた夭折の画家・村山槐多の絵、詩、小説、戯曲を網羅しています。
作品は図版でしか観ていませんが、観る人を惹きつける独特の力強さを感じます。
「死に急いだ」とも「生き急いだ」とも思える激情の人だったようです。