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本の話 高良とみ、高良留美子について。「麻生直子編『女性たちの現代詩 日本100人選詩集』

タゴールの詩『新月』を紹介しましたが、翻訳の良さに惹かれ、翻訳者・「高良(こうら)とみ・高良留美子(こうらるみこ)」を調べました。


高良とみ(こうらとみ)(189671 - 1993117日)は、日本の婦人運動家、平和運動家、政治家、戦後初の女性議員。多くの功績のある人だと知りました。まったく知らない人でした。私は、タゴールの詩の翻訳者として名前に触れながら素通りしていました。私の頭の中の狭さに自分で呆れ恥ずかしくなりました。九州帝国大学医学部の助手、日本女子大学校家政学部教授を歴任しています。タゴールに感銘をうけ、来日講演実現に尽力しました。


高良留美子(こうらるみこ)(19321216 - )は、日本の詩人、女性史研究者。夫は作家の竹内泰宏。 高良武久、高良とみの娘。東京生れ。母方の高祖父は田島弥平。東京藝術大学美術学部中退、慶應義塾大学法学部中退。1962年、詩集『場所』でH氏賞受賞。

私は、高良留美子を、持っている本のどこかで見た曖昧な記憶に気がつき、探してみました。探している途中、気になる別な本に寄り道をするので、なかなかたどりつきません。

ようやく、見つけました。

古本屋さんで何気なく手にした一冊「麻生直子編『女性たちの現代詩 日本100人選詩集』梧桐書院 2004年」、です。

本の話 高良とみ、高良留美子について。「麻生直子編『女性たちの現代詩 日本100人選詩集』_f0362073_08480827.jpg


その中から・・・・・・


妖精たち    高良留美子


北の国の森の窪地は

妖精たちのふるさと

たとえば


牝牛のお腹(なか)に忍びこみ

お乳を真っ黒に変えてしまう

いたずら好きの小鬼たち


私の生まれた家の

天井の高い書斎の本棚から

あの小鬼たちはとび出してきたっけ


かれらが困らせるのは

農家の意地わるの小母さんだつたか

それとも正直者のおかみさんだったかしら?


あれから負けいくさがつづき

本はどこかへいってしまい

わたしは物語を忘れてしまった


でもお前たちがいたことだけは憶えているよ

茶目っ気と 悪意をもった

陽気ですばしっこい妖精たち


悪を知り始めていた女の子に

かれらは青い表紙でとじた本のなかから

そっと仲間同士の合図を送ってくれた


わたしの傷ついた脳の上で

とんだり跳ねたりでんぐり返しをしたりして

不思議なリズムを響かせてくれたっけ



途中にハッとする二つの連がありました。


あれから負けいくさがつづき/本はどこかへいってしまい/わたしは物語を忘れてしまった

でもお前たちがいたことだけは憶えているよ/茶目っ気と 悪意をもった/陽気ですばしっこい妖精たち


易しい言葉で、「戦争による精神的破壊の恐ろしさ」、「その時に、憶い出し、支えてくれる子供の頃の記憶の大切さ」、を語っています。


by hitoshi-kobayashi | 2019-11-21 08:00 | Comments(0)