2020年 11月 20日
本の話 川上澄生著『我が詩篇』龍星閣 昭和31年(1951年)
古本屋巡りは楽しい時間です。
札幌市大通西18丁目の並樹書店は、私の散歩コースの目標の一つです。
この書店の店主は、どうやら川上澄生が好きらしいのです。
川上澄生の本を見つけました。たまらず、購入しました。
川上澄生は高名な版画家ですが、詩をたくさん残しています。
これから、少しずつ紹介したいと思います。
本は紙製の箱に入っています。
勿論、川上澄生自身の装丁。
ランプの右の鬚の人物は、川上澄生が師父と呼ぶ「アンリ― ルソー」です。左は、自画像です。
最初の詩です。
我は
我はかつて詩人たりしか
ひそやかに今も尚詩人なり思へるなり
詩人は常に文字を以て詩をかかざるべらざるか
我は今詩情を繪畫に託す
あな哀れ 我が詩情は詩とならずして繪畫となるなり
私は、川上澄生の詩や文に、そこはかとないユーモアと哀愁を感じています。
この「我は」は、自分を少しななめから見ていますが、かなり真面目な自己分析です。
川上澄生の本心は、自分の詩情を文字で表現したかったかもしれません。
最後の一行は、自嘲気味に本心を装っていますが、決して本心ではないでしょう。
版画の道に進んだことに後悔をしているとは思えません。
その前に置かれた
「我は今詩情を繪畫に託す」
に、川上澄生の版画への思いがこもっています。