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「何もしない」は、長田弘の『最後の詩集』の後半におかれた詩のような六篇のエッセイ「日々を楽しむ」の一篇です。

長田弘著 『最後の詩集』みすず書房 20157

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何もしないんです。長田弘さんは・・・・

しないことを列挙しています。

釣り、ヨット、碁、将棋、パチンコ、ゲームセンター、運動、ゴルフ、テニス、走らない、野球、泳がない、スキー。

運転免許返上、ツアーの旅、温泉宿に行かない、遍路、賭け事、麻雀、競馬、弓、武術。

盆栽、植栽、絵画、コーヒー・紅茶に凝らない。

酒・ビールは飲まない、ワインは最初の一杯が最後の一杯。

目的が先にあることをしない。


何もしないときにすることは、読書、絵を観る、音楽を聴く、DVDで映画を観る。

でも、長田弘はそれを仕事と地続きであり、楽しみではないと言います。


でも、私は知っています。

彼の膨大な読書量・音楽に関する博識を。

多くのステキなの詩を創り、発表してきたことを。

そして、このエッセイが発表されたのは2014年であり、長田弘が亡くなったのは2015年であり、「最後の詩集」の発行が2015年であることを。


長田弘が挙げた何もしないことは、私の何もしないこととほとんど同じです。

違いはお酒。

酒、ビール、ウイスキー、ウオッカ、グラッパ、紹興酒・・・・なんでも飲みます。

ワインは最初の一本を最後の一本にするかどうか・・・・迷います。

私は、膨大でない読書をします。多少音楽も聴きます。多少映画も見ます。

でも、それは長田弘の1%未満。

ですから、私の場合は「ただ何もしない」だけです。


長田弘は「何もしない」の最後で「サボナローラの椅子」に座り、食事をすることが楽しいと言っています。

「サボナローラの椅子」を調べました。こんな形の椅子でした。

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ステキなクラシカルな椅子ですね。


by hitoshi-kobayashi | 2017-05-16 08:00 | Comments(0)

巻頭にある長田弘の詩です。


本を愛しなさい、と

人生のある日、ことばが言った。

そうすれば百年の知己になる。

見知らぬ人たちとも。

風を運ぶ人とも。

死者たちとも。

谺(こだま)とも。



「本を愛しなさい」 長田弘著 みすす書房 2007年

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この本は10篇の小伝からなっています。

詩人の少年時代  W・H・オーデン(190773)イギリス 詩人

犬とリンゴと本と少年  レナード・ウルフ(18801969)イギリス 政治経済論者

アンダスンと猫  シャーウッド・アンダスン(18761941)アメリカ 作家

世界はまるい話  ガートルード・スタイン(18741946)アメリカ著作家詩人、美術収集家

とても風変わりな動物  コンラッド・エイキン(18891973)アメリカ 児童文学作家

不思議の国のハックスリー  オルダス・ハックスリー(18941963)イギリス 著作家

アメリカ三文オペラ  クルト・ヴァイル(190050)ドイツ 作曲家

ラニアンさん  デイモン・ラニアン(18801946)アメリカ 作家

ウィリアム・ルビーの幸福  ウィリアム・ルビー イギリス

吟遊詩人よ。起て!  ブレンダン・ビーハン(192364)アイルランド 作家


長田弘は、美しいわかりやすい言葉で、取り上げた人物の生涯を浮き彫りにしています。

恥ずかしい話ですが、登場する人物の名前や作品を知りませんでした。


長田弘は、あとがきに本を書いた動機を述べています。

 ―わが愛する本とその書き手たちの肖像画を描きたいというのが、『本を愛しなさい』として今あらためて上梓される、この本の十篇を書きついだときの動機だったと思う。―


きっと、この10名の人物は、長田弘が読んだ多くの本・著者の中から特別な思いを寄せた人たちなのでしょう。

あたりまえですが、それぞれの人物は全く違う生涯を送るのですが、共通するのはしっかりと独立した強い個性を持ち、それをさらに確立し、死ぬまで維持するところです。

長田弘は、それぞれを愛すべき人間としてその生涯を分かりやすく書いています。

読者は、人物を知らなくても、作品を読まなくてもかまわないんです。

長田弘が、10名の魅力的な個性と生き方を教えてくれます。


小伝のなかで、ウィリアム・ルビ―は異質な存在です。

ウィリアム・ルビーは作家ではありません。体をつかって働き続けた人です。

ウィリアム・ルピーは、子供のときから独立した一人の人間として働き、大きくなって一介の労働者になることを望み、実現します。非常に強い意志を持った人物として書かれています。


それにしても、長田弘の膨大な読書量と博覧強記ぶりには驚かされます。

読み終わったあとは、長田弘の「人とその人生をみつめる」温かい視線を感じます。


by hitoshi-kobayashi | 2016-11-04 08:00 | Comments(0)

何かとしかいえないもの 

 食卓一期一会 お茶の時間より 長田弘


それは日曜の朝のなかにある。

それは雨の日と月曜日のなかにある。

火曜と水曜と木曜と、そして

金曜の夜と土曜の夜のなかにある。


それは街の人混みの沈黙のなかにある。

悲しみのような疲労のなかにある。

雲と石とのあいだの風景のなかにある。

おおきな木のおおきな影のなかにある。


何かとしかいえないものがある。

黙って、一杯の熱いコーヒーを飲みほすんだ。

それから、コーヒーをもう一杯。

それはきっと二杯めのコーヒーのなかにある。


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昔々数十年前、帯広にたくさんの喫茶店があり、私は「珈琲園」の常連でした。西27丁目の路地奥にあり、外観はボロイ感じでした。

「ここのコーヒーは帯広で一番美味い」と友人に連れていかれたのが最初です。

アルコールランプよるサイフォン式で、注文ごとにコーヒーを丁寧に入れてくれます。

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これを手に入れ、自分でコーヒーを落とすのが夢でした。

でも結局インスタントコーヒーです。


十勝毎日新聞の珈琲園の記事

http://www.tokachi.co.jp/kachi/saten/13.html


ボロイ扉をあけると、珈琲の香りが古い内装に良く合い、落ち着いた大人の雰囲気です。

壁を背に、カウンターに向って一人で座るテーブルが珍しく、本を読みながら1時間ほど過ごすのが楽しみでした。

カウンターの中には蝶ネクタイ・黒いベストの2~3名の男性が働いていました。

お父さんと息子兄弟二人と見破りました。

私が通った頃は、高齢の男性〈お父さん〉がマスターとして、珈琲を入れていました。

カウンターの上部には、きれいなイラスト活字文字の長文の大きな看板がかかっていて、一目で看板屋さんが丁寧に作成したものと分かりました。

マスターのエッセイだったと思います。

先ず、これを読みながらコーヒーを一口飲みます。良い時間です。


「珈琲園」のコーヒーに、長田弘の言う「何かとしかいえないもの」を探していたのかもしれません。


「珈琲園」は改装して「珈琲園バンカム」と名前を変えました。


現在は、西5条北2丁目に移転してお店を続けています。多分あの時のお兄さんが珈琲を入れていると思います。もしかするとその息子さんの代になっているかもしれません。

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1972年(昭和47年)の帯広の地図です。

見にくいかもしれませんが、左上の画、「クレジットのデパートのほくそう」の上にあるのが「珈琲園(渥美)」です。

本当に路地中です。

ちなみに左下の画は、現在の藤丸デパートになりました。






by hitoshi-kobayashi | 2016-09-05 08:00 | Comments(0)

「アメリカの心の歌」長田弘著 みすず書房
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昨日のつづきです。

「アメリカ・ザ・ビューティフル」(America, The Beautiful

https://www.youtube.com/watch?v=jnH-m7M3uA8

長田弘は、「星条旗よ永遠なれ」はオリンピックで歌われる国家ですが、もう一つのアメリカ国歌といわれる歌として紹介しています。

 アメリカの美しい山並み、豊かな国土、そして広大な大地から生まれる豊かな穀物を歌い上げる「アメリカ・ザ・ビューティフル」は、アメリカを歌う心の歌としてアメリカの人々に受け止められている、と言います。

われわれ日本人に、日本の国土の素晴らしさを讃える歌があるのだろうか?

私が知らないだけかもしれない。多分、あるんだと思うとしか答えられないが。

日本人の誰もが知っていて、大勢で大合唱できる日本の歌があればいいですね。

このことは自然発生的に歌い継がれ、人々(日本人)の間に広まった歌であることが理想ですね。

例えば「兎いしかの山 小鮒釣りりかの川」の「ふるさと」のような歌でしょうか。


話しはそんなに単純ではありません。

作詞者のキャサリン・リー・ベイツ(Katharine Lee Bates/18591929)は1890年代(明治20年代)に作詞し、1862年(文久2年)にサミュエル・ウォード(Samuel A. Ward)が作曲した聖歌MATERNAのメロディにのせた「アメリカ・ザ・ビューティフル」が現在定着しています。

昨日の「アメイジング・グレース」の作詞者ジョン・ニュートン氏は、奴隷商人から牧師になった英国人であり、「アメリカ・ザ・ビューティフル」の作詞者キャサリン・リー・ベイツは大学の教師であり、歴史の違う視点によって作られた二つの曲がアメリカの心の歌として愛唱歌となっていることに、「アメリカの心の歌」とは何かと考えてしまいます。


「アメリカ・ザ・ビューティフル」歌詞・日本語訳

世界の国家・行進曲より

http://www.world-anthem.com/march/america-beautiful.htm


何と美しいのだ 広大な空よ

琥珀色に波打つ岩肌よ

荘厳な深紅の山々よ

果実をもたらす平原の上に!


アメリカ!アメリカ!

主は汝に恩恵を与えたもう

冠を頂きし同胞達との幸福

太平洋から大西洋へと広がりゆく


何と美しいのだ 先人達の歩みよ

揺るぎ無き熱情に満ちた奮闘よ

荒野に渡る自由への轍(わだち)よ!


アメリカ!アメリカ!

主は汝の傷を癒したもう

汝の魂はもはや束縛されることなく

汝の自由は法に刻まれたのだ!


何と美しいのだ 英雄達の自由への奮闘よ

自らを犠牲にして祖国を愛する人々よ

そして命をも厭わない慈愛よ


アメリカ!アメリカ!

主が汝の黄金を精錬されんことを願わん

全ての結果を崇高ならしめ

全ての収穫を神聖ならしめるまで 


何と美しいのだ 愛国者の夢よ

幾年にも渡り 白くきらめく街

涙で濁ることなきその輝きよ!


アメリカ!アメリカ!

主は汝に恩恵を与えたもう

冠を頂きし同胞達との幸福

太平洋から大西洋へと広がりゆく


追記

台風により被害にあわれた方々に、心からお見舞い申し上げます。




by hitoshi-kobayashi | 2016-08-24 08:00 | Comments(0)